マーケティングの入門書としてよく読まれている良書です。
でも、マーケティングという言葉にとらわれず、営業と直接関係ない仕事の方に読んでほしい本です。
佐藤義典著:ドリルを売るには穴を売れ
- 非営利部門の従事者(経理、総務など)
- 製造部門の従事者(工場作業員、設計など)
なぜかというと、売上を立てて利益を得ることの大変さを、会社の人全員が知るべきだからです。
「商品を売って→お金を稼ぎ→利益を上げて→給料をもらう」
この当たり前の流れのうち、最初の「商品を売る」が達成できないと、給料も当然出てきません。
私は経理ですので、商品を企画することや、サービスを販売するノルマもありません。
ですが、毎月決まった日に給料が入ってきます。
その裏で、いかにして売れる商品を作るか、どう売っていくか、を考えて実践している部門があるからこそ、会社に利益が生まれ、給料として社員全員に還元されるのです。
- マーケティングの基礎知識
- 売上を立てて利益を得ることの大変さ
書籍について
概要
著者は経営コンサルタントをされている佐藤義典さんです。
2006年末の初出から、2022年3月時点で第31刷ものロングセラーを続けている本です。
当時に流行ったものなどを例に出しているので、若干古さはありますが、マーケティングの説明内容を理解するには何ら支障ありません。
内容
マーケティングの基本の4つの理論を解説しています。
- ベネフィット
- セグメンテーションとターゲット
- 差別化
- 4P(Product、Promotion、Place、Price)
マーケティングにおいては、顧客が求めている価値(ベネフィット)、顧客を分類して絞る(セグメンテーションとターゲット)、競合より高い価値を提供する(差別化)、価値を実現するための製品・販促・販路・価格(4P)を意識することが基本です。
この本では、それらを1章毎に分けて、解説しています。
また、1章ごとに「理論の解説」→「ストーリー」の構成になっています。
ストーリーの内容は「新人社員が、マーケティング知識を学び、実践しながら、ジリ貧のレストランの再建を目指す」というもので、各章が繋がって一つの物語になっています。
理論の勉強した後、すぐにストーリーで振り返るため、理解の助けになり、読みやすいです。
良かったポイント3点
ポイント① 商品を売るための仕組みを知れる
マーケティングに疎い人にとって、自分が商品を手に取るに至った経緯や仕組み(つまりマーケティング)を知ると面白いです。
聞いてしまえば、「なるほど、そうだよね」と思う単純なことですが、知識として整理されていないと自分で活かせません。
自分の仕事や副業で使える知識ですので、どんな職業・職種の人でも読んでみる価値はあります。
ポイント② 売上を立てて利益を得ることの難しさを再認識する
フィクションだが、著者のコンサルティングの経験に基づいた、現場の温度感などが反映されています。
本社と営業所の距離感とか、部門間の仲の悪さ・コミュニケーション不足など、会社で働いている人なら感じるものがあります。
ストーリーの中に、聞く耳を持たない現場と本社の主人公の対立が描かれています。
ここで、冒頭に申し上げた「売上を立てて利益を得ることの大変さ」を再認識することができます。
いいもの作れば売れるでしょ?という現場の人と、よく考えないと売れないんだよ?という本社の構図ですが、その大変さを少しでも知っていれば、最初から建設的な議論ができるんだろうと思います。
この本を通して、売っていくために自分の職務で何ができるのか、を考えるきっかけになります。
ポイント③ 本が苦手な人も読める
- ボリュームが250ページ程度
- その半分は振り返り用のストーリー
- 専門用語が少なく初心者でもわかる解説
ボリュームが多いと、読み切るまでに時間がかかって、最初の方は忘れていく……なんてことありませんか?
この本は章ごとにストーリーで復習できるので、知識の定着がしやすい構成です。
そもそも、マーケティング初心者に向けた本なので、専門用語は必要最小限に抑えられています。
途中で諦めずに読み切れる工夫がされているので、読書が苦手な人でもおすすめできます。
さいごに
マーケティングの基礎知識を知るという点ではもちろんおすすめできる本です。
ただ、営利・非営利部門関係なく全ての人が、商品を売って利益を得る大変さを認識しておくことが大事です。
経理の私から言わせていただくと、全社員の給与・賃金は売上から原価を差し引いた利益から出ています。
売上が振るわないことは、決して商品企画や営業だけの問題(他人事)ではありません。
私も、経理の立場から自社の商品やサービスを見て、有用なアドバイスができるように日々考えておきたいものです。
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